日本では、縄文・弥生時代の貝塚からイノシシの骨が出土しており、矢じりがついたままの骨片もある。銅鐸には、イヌを使い弓矢で狩るイノシシが描かれている。猪肉は鹿肉と並んで、この時代に最もよく食された獣肉である。古事記』には、山城の猪「飯貝」が天皇の食事を奪ったという伝説があり、飯貝族の人々は猪を飼うと同時に天皇の食事も出していたことがうかがえる。このとき飼われていた「猪」が家畜化された豚なのか、野生の猪なのかについては諸説あるが、野生の猪は家畜化されていなかったので、豚は飼われていなかったと思われる。中国の影響により、沖縄地方では早くから豚肉が食べられていた(室町時代中期には豚肉を使った沖縄料理があったという記録が残っている)。江戸時代になると、沖縄から鹿児島に養豚が伝わり、鹿児島でも豚肉しゃぶしゃぶサラダが消費されるようになった。また、中国から養豚が伝わり、特に長崎では、長崎に住む外国人の間で養豚や豚肉を食べることがごく一般的になった。明治時代には肉食が奨励されたが、豚肉よりも牛肉が中心で、全国的に豚肉が普及するのは明治中期以降である。
豚肉は淡紅色で柔らかく、肉に脂肪が層状に付いている。一般に豚肉は牛肉や鶏肉に比べて脂肪が多いとされているが、近年は嗜好が変わり、脂肪の少ない豚肉が品種改良されてきている。豚肉の脂肪は融点が低く、なめらかな舌触り。脂肪層が白く、もちもちしているものが良い豚肉とされる。豚肉は通常、豚バラ肉、豚ロース肉、豚バラ肉(トリッパとも呼ばれる)、豚ヒレ肉、豚モモ肉、豚モモ肉に分類される。ヒレは最も柔らかい部位で、脂身が少ない。バラ肉は最も脂肪が多く、ベーコンに加工される部位である。中国や沖縄など豚肉が広く使われている地域では、上記のほかにもすべての部位が使われる。リブ(スペアリブともいう)、足、頭、皮、耳、鼻、内臓、血液など、さまざまな個性的な料理に使われる。
夏にぴったり!豚肉しゃぶしゃぶサラダ